top of page

鈴木いづみ / 迂遠について

2021年10月21日(木)から10月31日(日)まで、東京・代々木上原のApril Shopで開催されました。


鈴木いづみさんは、布や紙、様々な素材でインスタレーションやドローイングなど多岐に渡る表現活動をしているアーティストです。1点ものの人形や袋のブランド「BEBEK」という活動もしています。April Shopは、アーティストの渡邉紘子さんのアトリエで、約1年前にOPENされ、11月15日(月)で1周年を迎えました。


今回は、いづみさんから展示の撮影をご依頼いただいたこともあり、展示が始まる前から、共に過ごす時間が多かったので、

僕が感じたいづみさんと展示のことについて、日記のように残します。


僕といづみさんの出会いは、TOKYO ART BOOK FAIR 2015でした。いづみさんがいたブースで、「The banks of the bone」という作品集を購入したことがきっかけです。iphoneで撮られた作品の写真に惹かれたのです。


屋外で撮られたにも関わらず、作品がその場に溶け込むように佇んでいる事が不思議でした。植物や無機質な人工物との組み合わせがあり、普通だったら、相反するかバランスが崩れて見えるのに、僕にはそう感じなかったのです。


DOOKSから出版されている「寝ている醒めている」も同様です。撮影前に改めて、購入していたその2つの作品集を眺めていて、作品を屋外で撮影することについて、気になったので聞いてみました。


「屋外で自分の作品を撮るときに人工物と合わせがちなのは、そういうものに惹かれる・自分の作品との親近感を感じる、からだと思います。親和性?が高いから溶け込むように見てもらえているのかなと思います。植物や自然物もすてきですが、道端を歩いていて見かけるような人工物のもつ無機質な感じからはいつも刺激を受けるし、作品づくりの大きなヒントをもらっています」


そしてその2つの作品だけでないけども、いづみさんが普段感じる事として

「真ん中が空いていたり、何もないものを見ると安心する。まるで私みたいだ」と仰っていた。


色々とお聞きできて良かった。そしてまたこの言葉を反芻しながら、作品集を眺める贅沢。


そんな好きな作家さんから、直々の撮影の依頼をいただけたので、とても嬉しかったのです。2021年6月から7月にかけて中目黒のdessinで開催された、小縞山いうさんとの2人展「寒天景色」に行ったとき、

「小俣さんって、展示の記録写真とか撮られます?」とお声がけいただいたのです。嬉しい気持ちを抱えながら、夏を過ごしていました。


9月中旬。西荻窪で打ち合わせ。それいゆという喫茶店で、お話をしました。いづみさんが作品を撮影しているという公園にも行き、蚊に刺されながらお話を聞いた。その時は、タイトルも決まっていなくて、小さな箱のオブジェの作品を沢山作ろうと思うと言われた。後に、打ち合わせで話したことが、全て腑に落ちることになる。


数日後、DM用の作品の写真と展示タイトルが送られてきた。その写真を小さくプリントし、打ち合わせ内容をメモしているノートに貼った。


展示タイトルは、「迂遠について」


僕は「迂遠」という言葉を知らなかった。

その意味は、こうだ。


1 まわりくどいさま。また、そのため、実際の用に向かないさま。

2 世の中の動きに疎いさま。


初めて、自分をテーマにした展示ということで、今回にあわせて綴られたステートメン(本文最後に記載)、そして作品をみながら、その言葉の意味について、自分も考えることになる。






展示作品は、箱(素材は、木、紙、プラスチック、金属など)の中に、布、紙、油絵、紙粘土、針金、紅茶パックの出涸らしなどを、いづみさんの手により詰められたというのか配置されたといっていいのか。適切な動詞が思いつかない。


沢山詰められている作品は、お弁当のようで、真ん中にお布団のようなものが置かれた作品は、ベッドのようでワンルームのお部屋のよう、どれも表情が違うし、その時に何か揺れ動いたいづみさんの感情が窺える。


箱は、正方形に近いものもあれば、長方形のように横や縦に伸びていたりするものもある。

特に木製のものは、四辺のうちどこかの辺が、空いている作品がほとんどだ。


その意図についても、こう語っていました。

「完全に閉じてしまうと、私は社会と自分を完全に断絶してしまう。意識的に少しだけ空けておくことで、風通しをよくしたいという願望が込められている」


会場にある41点の作品が「鈴木いづみ」なのだ。

搬入日終盤に、壁に設置された棚と作品たちをみて「森みたいだ」と言っていたのも印象的だった。


「迂遠について」というタイトルにするあたりも、とてもいづみさんらしく、そこはまわりくどさは感じず、実直に自分と向き合い、さらけだし、表現することにまっすぐな態度をとられていると感じた作品たちと展示空間でした。


展示写真は、worksのページに載せています。


「迂遠について」ステートメント


箱の中央を大きな空白に譲ると

内部の殆どは覆われ、見えなくなる

押し出された背景を辿りながら

隠されたもの、在ったかもしれないものに目を凝らす



空白のかたまりはわたしの中にも

不安や無知を孕み、さみしく邪魔だが動かずそこに在る

どうしようもなく、けれどときどきは身を委ねてしまえば

諦めをゆるす広々とした布団のようでもあり不思議だ



余白がもたらす不確かさの、小さな声を聴きたい



----展示について----

「迂遠について」


2021.10.21 Thu −10.31 Sun 13:00 - 19:00

月火水定休


-


鈴木いづみ


April Shop


-

(ギャラリー紹介文より)

インスタレーションや絵画など多岐にわたる表現活動をしているアーティスト、鈴木いづみの展覧会を開催いたします。

今回は小さな箱のようなオブジェをメインにした新作を発表いたします。ぜひご高覧ください。



閲覧数:45回

20230203

ゲルハルト・リヒター展

9月28日水曜日。東京都近代美術館にて開催されているゲルハルト・リヒター展へ行った。 今週末10月2日(日)が展示最終日ということもあって、混雑していた。 1時間毎の整理券で入場人数を制限していて、美術館には14:00頃着いたけど、15:00-16:00の整理券を配り始めて...

Comments


bottom of page