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2.FALL

2022年4月、僕がFALLで個展をした時に、後藤さん夫妻もきてくれた。

FALLは、東京・西荻窪にある雑貨店で、店主の三品輝起さんが営むお店である。

「作家ものの道具、日用品、近所の音楽家たちの作品、書籍やアンティークなどをあつかっています。なるべく幅広い界隈から、変わった物を少しずつ集めています。また週がわりで自主企画の展示会をひらくギャラリーでもあります。」とお店の説明を貼り付ける。

僕みたいな写真家の展示は珍しく、ほとんどは日用品としても使える作品を作っている作家の方たちの展示が多い。特に陶器やガラス器の作家さんの展示は、年間を通しても
企画されていることが多く、後藤さんの作品もどことなく相性が良さそうだなと思っていた。

実際のところは、どことなくという曖昧なものではなく、後藤さんの人柄や、今まで企画されていたガラス器の作家さんの作品とは違っていたこと、そして何よりも、三品さんと後藤さんが展示中に楽しそうに話している画が想像できた。

僕が特別何をしたわけではないけれど、それとなく展示が実現したらいいなと思いながら、お二人とは接していた。
そうして、展示することになったと連絡をいただいた時は、とても嬉しく、後藤さんにも「小俣さんにつないでいただいたご縁ですので、感謝しています。ぜひ展示の時は写真を撮ってほしいです」と言ってくれた。

時が経ち、展示が始まる1ヶ月前くらいに、後藤さんから改めて撮影依頼の連絡をいただいた。


後藤さんの作品や展覧会のイメージといえば、美術作品が多く、場所もギャラリーや美術館での開催が多かった様に思う。
今回は、ガラス器の展示販売がメインとなる初の試みとの事で、その移ろうことになったきっかけは展示が終わってからわかることになった。

ギャラリーではない雑貨店という場所だったので、「物撮りや会場写真的なものでなく、展示の記録のようなものが希望です。どのように撮るのか基本的にお任せ致します」というオーダー内容だった。

「はて、どうしようかな」とその時は思いつつも、展示作品や展示風景からは汲みとれないものを僕なりに残そうと思い、この文章をこうして書いている。

6月6日(火)。展示搬入日。13:00過ぎにFALLに到着した。
すでに段ボールを開梱し、器たちをテーブルに並べている途中だった。僕もカメラをとり出して、どう撮ろうかなと考えていた。
後藤さんと三品さんは、後藤さんが上京した頃の若い時の話を話題に盛り上がっていた。僕は準備をしているところから、撮影をはじめた。

ある程度、テーブルに作品が並び始めた頃、三品さんが用事で席を外された。後藤さんも、花器に挿すお花を追加で買いに行きたいという事で、お店に一人になった。その合間に、自分の納得のいくまで写真を撮ることができた。

設営が無事終わり、僕も撮り終えることができたので、最後に店先で二人の写真をフィルムカメラで何枚か撮った。
後日、プリントされたこの写真を見た時、とても嬉しかった。

FH000014.JPG

そして、後藤さんとFALLを後にした。
後藤さんが、「今日はこの後、何か予定ありますか?」と言われたので、特にないですよと返事をすると「ジェラート食べませんか?」というお誘いだった。
移転前のFALLがあった建物が取り壊され、その跡地にできたクリサンス西荻というマンションの1階にあるモンドジェラートというお店だ。僕も何度か食べたことがある美味しいジェラート。

その日は、マーマレードとブルーベリーマスカルポーネのダブルカップをご馳走になった。
最近の事など話していると、「実は、この後最近買った弓具をお店に取りに行くんですけど、よかったら来てくれませんか?」と言われた。

そう、後藤さんはちょうど1年前くらいから、弓道を始めたのだ。昨年の9月に、後藤さん夫妻と水戸に行った時にも、そんな話を車の中でしていた。

今では週に2,3回、地元の弓道場に通っているそうで、まさか弓具を買うまでになっているとは驚きだった。

後藤さん曰く、弓道が、ガラス作家としての活動にも通じていることに気づき、もはや表現活動にも変わりうる行為だとも感じていると言っていた。そんな話をしながら、西荻窪から白金高輪に向かい、弓具を受け取る瞬間に立ち会うことができた。

お店の前で記念すべき1本目の弓を持った後藤さんを写真におさめ、後日改めて弓道の話を聞きに行くことにした。

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