1.後藤さんとの出会い
「物撮りや会場写真的なものでなく、展示の記録を小俣さんなりにしてほしい」
展示写真の仕事において、いつも依頼される内容とは違ったため、少し戸惑いを感じた。後藤さんのために、どう記し残したらいいだろうと悩んだ末、後藤さんとの出会いまで遡ることにした。写真を撮っていてよかったと今になって改めて思う。
後藤さんと僕の出会いは、2014年に遡る。当時、SNSでなんとなしに知り合いの誰かを伝にフォローした記憶がある。
ちょうど、その年の3月に錦糸町のプリズムプラス/硝子企画舎(現在は押上に移転)で個展を開催されるということで、初めてお会いした。それにも関わらず、気さくに話してくれて、作品はもちろんの事、ギャラリーに併設されていた工房の中まで丁寧に案内してくれた。
誕生日が同じ3月12日という事が分かり、年齢は2つ違いだけど、やたら親近感が湧いたのが第一印象だった。
- 後藤洋平さんプロフィール -
新潟県出身。2008年、富山ガラス造形研究所卒業。
オーダーメイドのステンドグラスのデザイン・制作・施工やデザイナーや企業からの依頼を受けての受注制作やガラス加工の他、作家として個展やグループ展の開催や、自らも展示企画を行っている。
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その後も、お互いの活動を通じて、ご縁が途切れることなくお会いしていた。気の知れる関係になり、2016年に初めて後藤さんの住んでいる街まで遊びにいった。
つくばエクスプレス沿線のとある駅まで電車で向かった。後藤さんは車で迎えにきてくれた。
まずはご飯を食べましょうとレストランに行き、ゆっくり話す。その日はレンゲ畑に連れていってくれた。他にも、後藤さんがよく行っているであろう場所を案内してくれた。日も暮れて、最後に「人生」という名のラーメン屋で醤油ラーメンを食べて、近くの駅まで送ってくれた。
小旅行のようで、どこにいっても心地よく、楽しかった事を憶えている。
今まで、何回か遊びにいっているけれど、車での移動中の会話で後藤さんの事を知っていった気がする。
くだらない世間話もすれば、真面目に作家活動や仕事のことについても話してきた。数年に1回ではあるけども、後藤さんとは時間を重ねていった。
2017年、このバラ園にはまだ結婚する前の妻も一緒で、この日を最後に、しばらく遊びに行っていなかった。
4年ぶりとなる2021年秋頃、僕が会社を休職している時に久しぶりに遊びにいった。休職中、親しい間柄の人たち何人かに会い、話を聞いてもらっていたのだけれども、後藤さんもその一人だった。
いつもと同じように、駅まで迎えに来てもらい、おすすめの場所に連れていってもらった。
その日は、利根川の河川敷で過ごした時間をよく思い出す。
残暑でそこまで暑くなく、風がとても気持ちよかった。目の前は田んぼで、人は全く通らず、農家さんの車が1、2回通ったくらい。車に積んであった小さい脚立を椅子にして座っていた。
そこで1~2時間過ごした。喋ったり、ただ目の前の景色を眺めたりしていたと思う。平日の昼間に、なんでこんな事をしているのだろうと思いつつも、こういう時間が大切なんだなとも、久しぶりに気づいた。
当時の僕にとって、とても大事な忘れられない時間を過ごした。